光機能性酸化物薄膜の形成と応用

 一般にガラスは絶縁体ですが、その表面に酸化スズや酸化インジウムの薄膜(透明導電膜)を貼り付けると、電気が流れるガラスを作ることができます。この透明導電膜には、近年のエレクトロニクス産業の発展にともない、セラミック薄膜ヒーター、電磁波遮蔽ガラス、プラズマディスプレイや液晶パネル、モニター画面用静電防止ガラス等の需要が多く、その大量生産システムが不可欠です。しかし、現在の薄膜形成法は、特に大面積薄膜形成に関して実用向きでないものが多いのが現状です。
 本研究室では、大気中での製膜が可能で装置構成が簡便で実験室レベルから実用的大面積薄膜形成にまで適用範囲の広いスプレー熱分解(SPD)法を用いた薄膜形成法を確立させるとともに、地元企業と共同でSPD製膜装置を開発しています。さらに低温や高速製膜を目的に、電磁波を利用した独自の製膜法にも取り組み、色素増感太陽電池や光学センサー等の光学素子への応用を検討しています。
 なお、本研究室では、一般(小・中・高校生)を対象としたセミナーや研究室公開の機会に、スプレー法による薄膜形成や色素増感太陽電池の作製実習やデモを随時行なっています。
研究内容

(1) 大面積(30cm×30cm)透明導電膜の形成
 
SPD法により、従来に比べ生産コストの低減並びに時間短縮を図ることができます。これによる製品のコストダウンは、2011年のテレビ放送のデジタル化に対応するプラズマディスプレイや液晶パネル、さらに新エネルギー源として注目される太陽電池の量産化に最適です。

デモ・実習・研究室公開

SPD法による大型製膜装置
(静岡県産学官協同事業)

色素増感太陽電池の実演
(テクノフェスタイン浜松)


平面プラズマの発生試験
(左:星形、右:静岡大校章)

(2) 新規透明導電膜の開発
 
資源の枯渇が危惧されるITO代替透明導電膜として、酸化物を中心に新規透明導電膜の開発およびその応用を試みています。

(3) 色素増感太陽電池の開発
 
SPD法による薄膜形成技術を利用し、安価で人体に影響の少ない元素から構成される化合物半導体薄膜を形成することにより、環境保全に適した色素増感太陽電池の開発を試みています。本研究により、環境にやさしいクリーンエネルギーとしての太陽電池の量産化が期待され、新エネルギーの実用化へとつながっていきます。

(4) 小型電子部品用機能性薄膜の開発
 
携帯電話やノートパソコン等、モバイル機器を支える磁性体や誘電体の薄膜を作製し、低価格での供給を目指します。

(5) 光応答センサーの開発
 
これまでの薄膜積層技術を基に、各波長に応答する光学センサーの開発を試みています。

(6) 電磁波による液相からの新規膜法の開発
 電磁波を利用して、従来と異なる液相からの新規製膜法の開発を試みています。

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